別冊ジャパネスカ|日本の技・匠の世界
















古来、万能の素材として重用されてきた竹が、
今、多様な用途として蘇る。
竹集成材を開発、生産工程を築き上げた竹田氏を
奈良県桜井の工場に訪ね、竹の可能性について訊いた。




竹の魅力とはなんですか。

何と言っても、身近に生い茂っているし、生育が早い。
そして、建築資材以外に、さまざまな用途に使われる可能性があることですね。

そもそも竹は古くから身近なところで使われてきました。
水筒や飯盒に使われ、お握りも笹の葉で包んでいました。これは抗菌性に優れているためです。タケキノンと呼ばれる抗菌成分があるからです。


竹は建築資材としても利用されてきました。

木材に比べ、堅牢で強靭で、ひび割れもしにくい。
一方で、弾力性もあるので、床などに向いてます。

また、伸縮率が低く、物差しなどにも使われてきていますね。

資源として身近にあって、素材として優秀なら事業性は高いはずですね。





平成12年に、建具の製作方法である「竹を用いたインテリア用材及びその製造方法」という特許を出願されました。

ある雑誌の編集長と話をしていたら、建具材の話になりましてね。これを竹でできないかな、と。


これが現在の主力製品、「竹集成材」としての突き板材と挽き板材に結実することになるわけですね。
発明や商品開発のアイディアというのは、どんなところから得られますか。

私たち自身で、そんなに考えられるもんじゃないですね。
それぞれ各業界の方々が、何かこういうものでやりたい、何か方法はないか、とか。そういうかんじでしょうね。


竹集成材の可能性とは。
竹そのものの効用を発揮でき、建築資材以外に、さまざまな用途に使われることになると思います。

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■特許を製品化するのは、発明より難しいはずですね。
付き板を加工する業者さんというのは、ないことはないんです。

ただ、日本の中で、竹で付き板を加工するというのをやっている、あるいは、やったことがある人というのは、まずなかった


■製品化するための技術自体が希少だったということですね。
現在は、いかがですか。

国内にいくつか取引先を置いています。


■木材と異なる点というのは、主にどのような点でしょう。

先にもお話しましたが、もうひとつ、竹の成分自体には、木材とは違う成分が入っている。シリカといってガラス系の物質です。

これが刃物が切りにくいとか、欠けやすいとかいう原因になります。


■生産コストの面ではいかがですか。通常の集成材の製造過程に比べると。

2、3倍では効かないでしょう。
木材というのは、伐採してきて、割っていけば材料としてできるわけでしょう。
これは、そういうわけには全然いきません。

細かく割って、割ったものを仕上げて、それを集成して、また仕上げて、という手順です。これはもの凄い手間でしょう。

だいたい竹では加工して使えるものは外の縁だけでしょう。それをこういうものにするということは、もの凄い手間が掛かっているんですね。

だから、これ自体の原材料費というのは、かなり高くついてくるものなんです。
竹そのものは安くっても、一枚の板にするためには、生産コストというのはかなり掛かることになります。


■一方、製品としての竹集成材は、高く売れるのでしょうか。

ところが、なかなか高く売りにくいですね。だったら、他の木材でいいよと。

竹を使う理由というのが、あるはずなんですけどねえ、先ほどの抗菌性であるとか、低い収縮性であるとか。

でも、それよりも価格の方が優先されてしまう現実はありますね。


■では、開発されて直ちに利益が出た、という感じでは決してないと。

いやいや、利益はまだ出てないです。なかなか難しい。

一番の問題点は、やはりコスト認識ですね。たとえば建具一つにしても、輸入木材であるスプルースに比べて割高かどうか、ということで選ばれてくる。

竹の集成材というのは、こういったやり方で加工するものですから、製造方法や過程に大変な手間が掛かっているため、ある程度、製品の仕入れ単価を上げざるを得ないのですが、一方で、木材は、安価な輸入材などが定着していますので、利益に結びつきにく。

竹素材にある種、こだわりの持っているお施主さんは、ちょっとくらい高くっても竹使うよとか、ありますけれど、まだまだ、やはり値段ありきで考えていますね。

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■竹集成材の多目的利用が期待されています。
すでにフローリング材や建具材として利用されていますが、その他、工業製品などにも使われようとしています。

ゴルフなど、スポーツ関連の用品とか、音響スピーカーとか、クルマの部品とかですね。

企業の商品開発前なので公開することはできませんが、これまでにない分野で、もっと広がりを見せていくと思います。


■竹の潜在的な効用が事業として見直しされてきたということだと思いますが、その後押しする原動力は何でしょう。

いろいろあると思いますが、肝心なのは、環境面から考えて、竹を使うという発想です。そういった風潮が、業界を超えて、広がりつつある。

各分野、各業界の方々が、では、われわれの業界で、竹を利用して何かできないかとか、という発想を抱くようになったこと自体、大きいと思います。

そういうの発想が出てきつつあるわけで、今後も動いていくと思いますね。


■近年、繁茂、拡大する「竹公害」が問題となっています。一説には、竹産業の拠点が人件費の安い海外へ移転したことを指摘されています。竹集成材は、環境エコロジー的な発想にマッチしているわけですね。

里山の荒廃は問題ですが、一方で、二酸化炭素を吸収する竹の役割は大きい。

竹は数年で生育します。筍が竹として生長する期間は1年ほどですが、この期間に竹は大量に二酸化炭素を発生させるのです。

ですから、再生サイクルの短い竹を資源として活用することにより、二酸化炭素を吸収させる。これは他の木材の伐採抑制にもつながっていくことになります。
そういった環境面で、竹というのは相当魅力がある。

竹の有効利用というのは、今後、避けて通れないのと違いますか。
経済的効用以上に、環境対策として有効なのです。





竹集成材の課題はありますか。

技術的には、集成材自体は、通常の木材と比較して、これを何かにするということでは、しにくいですね。まず硬いので刃物がなかなか通らない。建具屋さんも切れにくいと思います。

ただ、集成材自体を加工するのに特別な技術や道具が必要ということはありません。


■一方で、竹集成材が浸透してきていることに手ごたえを感じていらっしゃいますか。

それはありますね。逆に、それは怖さでもあるわけで。(笑)
だから、自分たちは、常に、次々と、何かを考えていかんと駄目やろね。


■竹集成材の国内市場をどう見ていますか。

この業界に大きなところがどんどん入ってこられたら、自分たちは勝てません。たとえば、大手の商社とかが竹ビジネスやりましょうと来られたら、技術力、資本力、宣伝の力にしろ、なんでもそうやけど、排斥されるでしょう。

竹集成材がどんどん広がっていくことはありがたい。ありがたいのですが、個人的な事業感覚からすれば、広がってもらうのは、自分を厳しくさせる。難しいですね。

しかし、竹の文化とか、環境面からすると、それば望まれるべきだし、超えないといけないとは思いますね。


■海外への展開も考えていらっしゃるとか。

ある大きな企業の社長さんなんかは、やはり日本の竹製品に、日本の竹に、こだわっているわけですね。

たとえば、ドア関係でのデザインで、今回、作り上げた格子状のドアというのは、かなり日本的ですが、あまり前例がないものでしょう。

そういう「日本らしさ」というか、竹素材で「日本」として製品を海外にもっていくということは、かなり面白いとかんがえています。


■海外で竹集成材は競争力をもちうるでしょうか。

厳しい点はありますね。

たとえば、中国に入れる場合、どこで作ればいいのか、いちばんいいのは日本で作った製品を入れるのがいいんですが、何しろ三倍ぐらいする。日本で作れば。

それと、日本でこういうことをやったら、何か独創的なものを作れば、たいがい中国は模倣します。いったんやるとなると、向こうは大規模にやりますしね。

ある企業の案件があって、今止まっているけれど、その幹部の方は、韓国のサムソンなんかには、絶対勝てへん、と言っていましたね。

まず国挙げてやってくる。日本で、民間の一企業を応援するというようなことはやりませんけれど、中国や韓国は、特定の企業を集中的に支援して、大きくするやり方を取るでしょう。

そういうやり方をする企業と相対していかなければならない。


■何が違うのでしょう。

たとえば、家電製品で不良品が出たとすると、これ不良品ですと言えば、直ぐに、全部新しいのに交換してしまう。無条件で、使い方を誤ったかとか、何にもなく、交換してしまう。そういうやり方するらしいのです。

日本はそうはしない。使用法、間違ってませんか、とか。われわれから見たら日本のやりかたというのは当たり前で、使い手が使い方間違って壊したものは、修理はしても有料ですとか、そういうやり方です。

しかし、向こうは、そういうのは一切関係なし。もう即交換。何が原因でそうなったかということは、あんまり考えないらしい。

私たちは、そういうところで、やっていくというのは、どういうことか。まず考えないといけない。

自分たちが、中国とか、海外に行って、一番言われもするし、思うのは、日本ではこういうのは当たり前というのが向こうでは絶対通用せえへんということですね。日本の常識は、外国の非常識、という言い方でしょうかね。

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日本の製材業や建築業は厳しい環境に立たされているなか、日本の技術力が今、改めて、問われています。

木材にしても、建築にしても、おんなじやけど、やっぱり日本て、技術ですよね。その技術を、いかに継承していくかというのが一番なんじゃないかなと思いますね。

おんなじようにやっとたら、やっぱりなかなか中国辺りには、勝てない。どれだけ、日本らしさ、日本の技術を加えてやるかどうか。

これはもう皆さんやられていることで、われわれが言うことではないけども、やっぱりそういうことでしょうね。


■今後の事業の展開として、どう考えていらっしゃいますか。夢をお聞かせください。

夢というのは、とにかく、日本の山の荒廃を少しでも防ぎたいと、いうことですね。
とにかく、今、竹公害と呼ばれて、竹が邪魔ものになっている。これを有効利用させるということですね。

これが一番大きなことですね。ちょっとかっこ良すぎるかも知れんが。


竹田社長にとって、「竹」とは、どういうものですか。

わからんもの。

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取材文責:WASEDABOOK編集部